SOLVER――それは、あらゆる問題を請け負い、迅速かつ正確に解決するプロである。
 様々な要因によって「時間がない」とされる現代において、煩雑な仕事にかける時間を少しでも減らせるよう、手軽な値段で依頼できる「お手伝い屋さん」としてこの仕事はスタートした。代行業の、もう一歩気軽なレベルという感じだ。
 その仕事は多岐に渡り、家事手伝いから浮気調査、宿題やレポートの手伝いなんかもしたりする。大きいものになると、要人警護や素行調査なんてものまである。
 しかし――

 藤崎 影夜は今日も街に立っていた。これも仕事の一環であるとは言え、自分ばかりがこういうことばかりやっているのは、毎度のことながら腑に落ちない。
 だが、仕事は仕事としてこなさなければならない。影夜は、道行く人々に狙いを定め、持ってきた“商売道具”を懐に忍ばせた。
 あまり露骨に近づくと、相手に警戒心を持たれてしまう。少しずつ、慎重に。何気ない風を装って、自然に、自然に近づいていく…
 あと、3 メートル。懐の“商売道具”はまだ出さない。
 あと、2 メートル。ここで、自分は足を止め、相手が近づいてくるのをただ、待つ。
 そして、1 メートル。
 影夜は手にした“商売道具”を懐から引き抜くと、素早く相手の前に突き出した!
 そして、一言。

「お願いしあーっす」

 しかし、そのお願いは聞き届けられず、手にしたビラは行き場を失ってひらひらと風に舞っていた。
 ビラには、『弧山SOLVER事務所』の文字。
 そう。これは、宣伝活動というやつである。

 今、弧山事務所には、仕事がなかった。

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