わかれ
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大切なひとを探している。
ずっと昔−−そのことに気付いたあの日から。 彼女は言った。 「わたしは」 目に涙を浮かべながら。 「あなたのこと」 その涙がこぼれてしまわないよう、まっすぐに僕を見つめて。 「嫌いになる」 その言葉に隠されたメッセージに気付いてあげられなくて……そのとき僕は、ただ、その急な宣言に腹を立てた。 次の日、彼女はいなくなった。 そのときだって、僕はただ逃げられた喪失感に打ちひしがれただけだった。 数ヶ月後、彼女が病にかかっていたことを知った。 病名までは分からなかった。ただ、ひどく厄介な病気らしかった。 「よく病院の方に出かけてらしたのよ」 僕にそのことを教えてくれた彼女の家の近所のおばさんはそう言っていた。 僕はそのときになって、ようやく、彼女のメッセージに気付いた。 彼女は僕に彼女を嫌いになって……忘れて欲しかったのだろう。 それは、僕に彼女以外のひとと幸せになって欲しかったからなのだろうか。 むかついた。 彼女のそんな自己満足な自己犠牲に。 彼女にそんなことを考えさせてしまった僕自身に。 そして僕は彼女を探し始めた。 様々な手を尽くした。 そして……どんなに手を尽くしても、この社会では僕に彼女を探し出すことができない……僕では彼女を救えないと痛感したとき。 気付いた。 彼女は僕にとって、たったひとり、本当に大切なひとなのだと。 大切なひとを探している。 ずっと昔――そのことに気付いたあの日から。 そして今も。 僕では救えないなら、社会のすべてがそう仕向けるのなら―― 社会をすべて敵にまわしてでも救う。 僕は社会の敵になる。 ▼あとがき▼ このSSは、とりあえずひとつSSがないと設定とかしにくいってことで書いた、要するに間に合わせの文章です。パクリがあったり、ありきたりだったりとするかもしれませんが、ご容赦を。 ちなみに、なぜ社会が救えないように仕向けるのかっていうのは、未成年だからとか、世間体を考えた周囲の人の態度とか、そういうことをイメージしてます。本文だけじゃわかりにくいと思ったんで補足。 |
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